2019年12月にAppleのiOSのアップデートによりiOS13.3が配信開始されました。アップデート適用と同時にモバイル通信が「圏外」になる現象が多数発生しているとの情報がTwitter等のSNSでも確認できました。
「圏外」問題が発生しているのは主に海外で購入した海外版のiPhone。本記事では現象の内容となぜそうなるのかという点を状況証拠にもとづいて検証します。
「圏外」問題の内容
「圏外」問題の発生は2019年12月。iOS13.3を適用したユーザーから多数の報告があり発覚しました。ただひとつ共通点がありました。それは現象が発生しているのが、海外で購入した海外版のiPhoneであるということ。
日本で発売されているiPhoneと海外で購入するiPhoneとで仕様が異なるということを、そもそもユーザーはあまり意識することはありません。
実は私もタイ・バンコク で購入したiPhone8を利用しており、まさに私自身がこの問題に直面し、初めて日本版と海外版の違いを意識するようになりました。本記事は実体験に基づく内容なので、ぜひご参考にしていただければと思います。
「圏外」問題の現象はこうです。
2019年12月にiOS13.3にアップデート後、iPhoneが起動し使用できるようになった際に画面左上の表示がおかしくなったことに気付きました。
いつまで待っても圏外表示のままなのです。iOSを13.3にアップデートする迄は普通に使えていたのに、なぜか圏外表示が戻らなくなってしまいました。
本来アンテナが表示されるところが圏外に・・・
「圏外」問題に試したこと6つ
一時的なエラーを疑った私は、圏外は何らかの方法で改善するはずだと考え、以下の6つのことを試しました。
(1) iPhoneの再起動
iPhoneの電源を一度切り再度起動します。iPhone8の場合の手順は以下の通りです。
- 本体側面の【電源ボタン】を長押しする
- 画面に【スライドで電源オフ】の表示が出る
- 【スライドで電源オフ】を右にスライドする
- iPhoneがシャットダウンされる
- 画面が真っ暗になったら本体側面の【電源ボタン】を長押しする
- マークが表示されiPhoneが起動する
- 以上で再起動は完了
結果は・・・・・「圏外」で変化ナシでした。
(2) SIMカードの挿し直し
SIMカードを挿し直してみます。iPhone8の場合は画面に向かって右側面にSIMカードトレイがあります。手順は以下の通りです。
- 本体側面の【電源ボタン】を長押しする
- 画面に【スライドで電源オフ】の表示が出る
- 【スライドで電源オフ】を右にスライドする
- 電源が切れたら本体側面のSIMカードトレイの穴にSIMカード取り出しピンを挿し込み、トレイを取り出す。(取り出しピンが無い場合は、ゼムクリックを伸ばしたものでも代用可能)
- SIMカードをトレイから一度取り外し、再度取り付けてSIMトレイを奥まで挿し込む。
- 本体側面の【電源ボタン】を長押しする
- マークが表示されiPhoneが起動する
結果は・・・・・「圏外」で変化ナシでした。
(3) 機内モードのオン・オフ
iPhoneの再起動を実施済みなので、あまり関係ないかもしれないと思いつつも試してみました。手順は以下の通りです。
- 【設定】アプリをタップする
- 【機内モード】のスライドが左(オフ)になっているので右(オン)へ動かす
- 数秒待った後に再度右のスライドを左(オフ)に動かす
- 画面上部左上のアンテナ表示のところが飛行機マークから戻れば完了
結果は・・・・・やはり「圏外」で変化ナシでした。
(4) モバイルデータ通信のオフ・オン
こちらもiPhone再起動、機内モードを実施済みのため意味はないようにも思いましたが一応試しました。手順は以下の通りです。
- 【設定】アプリをタップする
- 【モバイル通信】をタップする
- 【モバイルデータ通信】のスライドが右(オン)になっているので左(オフ)へ動かす
- 数秒待った後に再度スライドを右(オン)に動かす
結果は・・・・・これまた同じく「圏外」で変化ナシでした。
ここまでやっても改善しないと少し事の重大さを感じてきます。
(5) iPhoneの初期化
iPhoneの初期化はiPhoneを工場出荷時に戻す作業です。これはかなり危険な作業となりますので注意が必要です。実施前には必ずバックアップを取ってから実施しましょう。
※実施される場合は自己責任でお願いします
- iPhoneのバックアップを取得する(iCloudもしくはPC/mac)
- 【設定】アプリをタップ
- 【一般】をタップして最下部まで移動
- 【リセット】をタップ
- 【すべての設定をリセット】をタップ
- パスコードの入力を求められるのでパスコードを入力する
- 【iPhoneの消去】をタップ
- マークが表示されしばらく待つと「新しいiPhoneとして設定」「iCloudバックアップから復元」「iTunesバックアップから復元」から選択できるようになるので、それぞれご自身のバックアップ状況により選択
結果は・・・・・これまた同じく「圏外」で変化ナシでした。
(6) iOS13.3.1(パブリックベータ版)へのアップデート
本記事をここまでお読みいただいている方は、おそらく海外版iPhoneを利用していて圏外問題になっている方だと思います。
iOSパブリックベータ版へのアップデートはリスクが伴いますのでオススメできませんが、私が既に試しましたので、結果を共有します。
結果は・・・・「圏外」で変化ナシでした。
システムバージョンが13.3.1だが「圏外」表示
「圏外」問題に対するSNSの声
Twitterで同じような事例が報告されていないか、調べてみました。
多数の海外版iPhone利用者が今回のアップデートで「圏外」問題に直面していることがわかります。
「圏外」問題の原因
UQコミュニケーションズとKDDIの関係
では、なぜこの問題が発生しているのか。UQモバイルの電波環境を取り巻く状況から紐解いて検証してみました。
UQモバイルを提供している”UQコミュニケーション株式会社(本社:東京都港区)”はKDDIの子会社になります。(引用元:Wikipedia)
主要株主 | KDDI株式会社 32.26% Intel Capital Corporation 17.65% 東日本旅客鉄道株式会社 17.65% 京セラ株式会社 17.65% 株式会社大和証券グループ本社 9.80% 株式会社三菱UFJ銀行 5.00% |
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海外版iPhone8、日本版iPhone8、KDDIの通信回線利用帯域の比較
UQモバイルが利用する通信回線はKDDI(au)の回線です。そこで海外版iPhone8、日本版iPhone8、KDDI(au)の通信回線利用帯域を比較してみることにしました。
今回、私が「圏外」問題に直面したiPhoneは前述の通りタイ・バンコク で購入したiPhone8になります。モデル名を確認すると「モデル A1905」でした。
モデル番号はA1905と記載
まず、モデルA1905を含むタイで発売されているiPhone8の通信関係の仕様をAppleのWEBサイトで確認してみました。タイで発売されているモデルはA1863、A1864、A1897、A1905の四種類があるようです。
モデルA1863、A1864
(引用元:Apple)
モデルA1897、A1905
(引用元:Apple)
続いて、日本版iPhone8の仕様を確認してみました。日本で発売されているモデルはA1898とA1906の二種類のようです。
モデルA1898、A1906
(引用元:Apple)
そして、日本の総務省のサイトにある各通信事業者の利用バンドを内訳を確認します。
KDDIは5つの帯域を利用
(引用元:総務省)
これらの情報を表に纏めてみました。
まずは、FDD-LTEです。1〜66まである帯域のうち、KDDI(au)が利用しているバンドは1、11、18、26、28、42の6帯域あります。その内の5つはタイ版iPhoneも利用可能な帯域ですが唯一、11バンドは対応していません。
続いて、TD-LTEです。KDDI(au)が利用している帯域は1、3、8、11、18、21、26、42の8帯域ですが、日本版iPhone8が対応している42バンドはタイ版iPhoneはどのモデルも対応していないことがわかります。
最後にCDMAの比較です。CDMAはおそらく3G通信で利用されるものかと思いますが、タイ版でも対応しているモデルとしていないモデルがあります。私が使用しているモデルA1905は非対応であることがわかります。
UQのサイトをくまなく調べてみましたが、残念ながらUQモバイルがauのどの帯域を利用しているのか、明確な記述を見つけることはできませんでした。
ただし、これらの状況証拠から推測する限り、FDD-LTEのバンド11、TD-LTEのバンド42及びCDMAをUQモバイルは利用しており、それが海外版iPhoneに対応していないため、通信ができないということだと思われます。
「圏外」問題の解決方法
では、この「圏外」問題を解決するにはどうすれば良いのでしょうか?
UQモバイルは海外版iPhoneについて明確なサポート外とは記載はしていませんが、あくまで動作確認機種は日本版である”モデルA1906″であるとしています。
UQモバイルの対応端末(iPhone8) (引用元:UQモバイル)
“日本で発売のモデル番号A1906で確認”と記載されている
ということは、タイ版に限らずA1906以外のモデルについては、動作するかもしれないし、しないかもしれない。つまりサポート対象外ということになります。
解決策は、①auからUQモバイルへの提供帯域が変わるのを待つか? ②他の通信事業者に乗り換えるか?の二択しかありませんので、実質は以下の解決方法を取らざるを得ません。
結論。UQモバイルから他の通信業者へ乗り換えしましょう。
私も格安SIMの中でも最速を誇るUQモバイルの通信速度の速さには満足していただけに、この切り替えという解決策は辛い選択とはなりますが、避けては通れないですね。
以上、状況証拠からの海外版iPhoneとUQモバイルの組み合わせで圏外になってしまう問題の検証でした。ご参考になれば幸いです。